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身体障害者補助犬法記念講演 第二弾

 
 介助犬を世界で初めて創案し、世界最大の介助犬協会CCI(Canine Companion for Independent)を創設し、世界初の学位(短大レベル)が取得できる介助犬訓練士学校を開校し、国際的な訓練士の輩出を行っている ボニー・バーゲン博士の講演会(03年4月29日の一般向け講演会と、5月1〜5日の愛犬にも生かせる「介助犬トレーニング実践セミナー 」)が開かれました。

29日の講演会には約150名が参加され、セミナーには50名(15頭の犬たちが一緒)の方が、5日間に渡り楽しく熱心に通園(ヤマザキ学園さんに感謝です)されました。

 まず、バーゲン博士の講義“ABC'S of the SMARTEST DOG TRAINING”を伺い、その後実践します。次の日は、前日行われたことに関しての質疑応答、そして講義+実践(前日の宿題を含む)という内容でした。

 ここでは、バーゲン博士のセミナーと赤坂動物病院院長柴内先生のレクチャーで「これは重要!」と思ったことと、感想、実践での犬たちの画像を紹介してみたいと思います。




[ボニー・バーゲン先生のセミナー]

“ABC'S of the SMARTEST DOG TRAINING”(賢い犬のトレーニングのABC)

 プログラムの大文字のアルファベットは、それぞれの内容の頭文字をとって、覚えやすくしたものだそうです。
(例えば、A=Association B=Bonding C=Consistency …になります。)

・方法論は、人間の教育学を用いた。というのは、犬は人間の思考パターンに似ているから。
犬は、人間のために役に立ちたいという唯一の生き物で、私たちと同じ感情もある。
人のために何かをしたいという気持ちが、自分(犬)たちの存在理由である。

・犬は、人間の子供と同じように親(飼い主)を操作しようとしている。
私たちは、『
αではなく、お母さんになること』が大切! 犬に対しても、敬意を抱く。
・犬とやりとりをする。表情、ボディーランゲージ、尻尾の状態を観察して、犬が何を言おうとしているのか、を考える。


・脳は、生き延びるのに必要な情報は、絶対記憶する。
  ex:カサカサ音がしたら=ライオンがいた。シューシュー音がしたら=ヘビがいた。⇔危険!
・良いときも覚えている。
  ex:この時期、この場所には美味しい木苺がなる。⇔また、来年採りに行こう。
・大事でないものは忘れる。密度の濃い、刺激の強いものが関連付けになる。
・トレーニングして一晩寝ると、脳は一番強烈だったことを覚えている。
・次の日にしっかり頭に残っていることが重要。(オーバーナイト・ラーニング

・ちょっとやって、楽しい!と思うところで止める⇒次にもっとやりたいと思う。
・タイミング、物事の順が大事。
  ex:「sit」と言ったら「すわる」→言葉が先、行動は後。
・「言葉」「行動」でトレーニングすると3〜4回で覚える。
・訓練が入っている犬は、学習方法が理解できるので、「行動」⇒「言葉」でも理解できる。

・「話す」ことは、遺伝子の中に組み込まれているが、「読む」ことは、学習していかないとできない。
(犬も字が読めれば、もっと簡単にトレーニングできるかもしれない。)

☆字を読む練習
字を読む練習
 DOWN 
@紙を見せて、downと言う。紙は、いつも同じ位置に構え、動かさない。
A伏せたら、「YES!」と言って、ごほうび。「YES!」と言うときには、紙は後ろに隠す。
@Aを2〜3回くらい繰り返す。
C次に紙を見せ、何も言わない。伏せなかったらdownと言う。
D伏せたら、「YES!」と言って、ごほうび。
*紙を見て、何も言わず伏せたら大袈裟に[YES!!!]と言う。
・違うことをしたら、「No!」と短く言って、一歩さがる。
・「YES!」は、とても短く高い声で言うこと。
字を読む練習
 SIT 
@downと同様にして、立っているのを確認して、すぐに紙を見せてsitと言う。
A座ったら、「YES!」と言って、ごほうび。
@Aを2〜3回くらい繰り返す。
C次に紙を見せ、何も言わない。座らなかったらsitと言う。
C座ったら、「YES!」と言って、ごほうび。
*紙を見て、何も言わず座ったら大袈裟に[YES!!!]と言う。

・できるようになったら、DOWNと SITの紙を交互に見せ、字を学習しているかを確認する。



☆犬の性格(耳の形判断)
・「立ち耳犬」は、保守的、攻撃的。同じ考えに固まりやすい。加齢で非常にまじめになる。
・「三角でちょっと折れている犬」は、立ち耳よりおとなしい。
・「角がある垂れ耳犬」は、殺さないがウサギなどを追いかける。
・「垂れ耳犬」は、攻撃性はなく年とっても子供らしいところがある。学習能力に長けている。

・関連付けをするときは、一貫性がなければならない。
・余計な動きをしない。⇒学習する時間が短くてすむ。
・一貫性がなければ混乱し、信用しなくなり学ばなくなる。
・リーダーがやっていることと、同じことをしたがる。行動は移る。感染力がある。
・大きな動きにして欲しいときは、大きな動きをする。

「Yes!」「No!」は、正しいか間違っているかのマーカー。
・「Yes!」は高い声で短く言う。
「No!」の発音は、Nop!という感じ No=stopと同じ。
決して「
NOー!」とは言わないこと。その言い方は、罰を与えていることになる。
・新しいことをトレーニングしたいときに「Yes!」を使用する。3〜4回で新しいことを学ぶ。(覚えたら「Yes!」は使わない)
大事なことは、がっかりしたり、怒りを表さないこと。怒ったり、がっかりしたりすると、犬は自分が悪いと思う。
トレーニングは、
happy,happier,happiest !≠ノっこりとENJOY
・一番難しい犬は、失敗が多くてやる気をなくしてしまった犬や、間違って関連付けしてしまった犬。


「ROLL」の練習
Rollの練習
@DOWNをさせる。
Aトリートを鼻先に持ち、持ったまま肩に移動。
B「ROLL」と言いながら、手を頭の後方へ持っていく。
C頭がついてくると、体が倒れてくる。※
Dそのまま、手を反対側の肩まで移動。
Eさらに犬がトリートを持った手を見ていれば、段々
へそてん状態になる。※
F最後にぐるっと回転し終わる。
※:途中で止めても「YES!」と言って、次のステップへ。
・電気のスイッチの練習
スイッチの練習
・ダンベルを持ってくる練習 ・ドアを開ける練習
ダンベルを持ってくる練習   ドアを開ける練習

・脳に働きかければ、体がついてくる。
・自分で考えて行動できなければ、介助犬としては働けない。
・機械的に訓練された介助犬は、一つ一つ命令されないとできない。
  ex:鍵を階段の下に落とした場合、脳に働きかけて訓練された介助犬はユーザーが何をして欲しいかがわかるので、すぐ鍵を拾ってくる。
しかし、機械的に訓練された介助犬は、まず「階段を下りろ」「鍵を取れ」「鍵を持ってこい」と一つ一つ命令しなければならない。

・犬が、飼い主以外でコマンドされても言うことをきくときは、(トレーナーなど)怖がるときだけ。
・力ずくで訓練した犬のほうが、良いデモをするということがある。(いつも厳しいから)

・訓練の時はhappyだったのに、デモのときは緊張して上手くいかないことがある。
・人前でパフォーマンスするときは、飼い主やトレーナーはリラックスする。

・適度な良いストレスは、覚醒状態を作る。(やる気がでる)→行動して上手くいく確率が高くなる。
・覚醒状態が高いと、視覚聴覚などの五感の域が狭くなる。
  ex:猫が横切る→興奮して、猫に集中する→名前を呼んでも聞こえない。
・リラックスすると、いろいろと見えてくる。

・本能(野生)の中に、挑戦するということが組み込まれている。挑戦は、自然の法則。→飼い主のウィークポイントに挑戦する。
・飼い主が、本当に私(犬)を守ってくれるか、頼れるパートナーかがわかれば、リラックスして飼い主の側で安心して生き延びられる、と思う。
・飼い主は、いろいろな状況に対してコントロールでき、感情的にならない。対応がよければ、犬の挑戦は減る。
・チャレンジされても、あわてない。もし、過ちを犯しても次に前向きになればよい。
(※ここでいう「挑戦」とは、引っ張る、噛む、飛びつく、吠えるなどのいわゆる問題行動のこと。)

・訓練と散歩のときに使用するリーシュは、チェーンカラーがいい。(個人的には、厚めのドイツ製のチョークチェーンがいいと思っている) 理由: フラットなカラーだと犬が自分から引っ張った場合、一箇所に力がかかり首の筋や気管を痛めることがある。その点、チョークチェーンは全体に力がかかり、しかもすぐに緩めることもできる。

・ただし、
絶対に人間が引っ張らないこと!(必要条件)
*「リーシュを引っ張ったら、手を切ります。」(バーゲン先生がセミナー中、ずぅーーーっと繰り返し言われていた言葉)





[柴内先生のレクチャー]

*緊急時に飼い主ができることは?⇒喉頭を開けて気道を確保し、心臓マッサージをする。
・そのときの注意点は?
@仰向きで抱かない。=舌が奥に入って、気管を塞いでしまうから。
A痙攣しているときは、絶対に口の中に手を入れない。=すごい力で噛む可能性があるため。
B必ず横向きにして、ガーゼなどで舌を引っ張り、前肢のひじあたりを押す。
(前肢のひじの内側に心臓がある。)

・犬の寿命は延びてきたので、最近では21才で人間の100才と同じとしている。(10才で50才と思えばいい。)
*何故寿命が延びたか?
@獣医学の発達
Aフィラリアの薬で予防
B室内で飼育する
C食事の管理
D行き届いたケア
E蚊の減少


犬と付き合うのは、何歳になっても生涯5才の子と一緒、と思わなければいけない。

・もしも病気になったら、気をつけることは?
@興奮させない=過激な運動を避ける
A温度の管理=高温を避ける
B食事の管理

・どうしても暑いところへ行くときは、アイスパックを作って胸周り喉を冷やすと良い。
例えば、犬用コートにポケットを作り、そこにアイスパックを入れる。

*日頃、飼い主が注意できることは?
・上顎犬歯上のピンク色の歯肉を押し、指を離す→歯肉は白くなる→2秒以内に元のようなピンク色に戻れば、心臓は正常に動いている。
・犬の体表面に1cm以上のできものを発見したら、なるべく早く診てもらう。
・飼い主は、触診、視診はできるが、それ以上のことは獣医に任せること。
・飼い主がパニックにならないこと。

犬は、悲しいとか怖い雰囲気は大嫌い。飼い主と一緒に安心して暮らせることが、至上の喜び。
「犬は、悩んだり死を恐れたりしない。無償の愛を与えてくれる。だからこそ、素晴らしい。」




[感想]

 基本的には、ファン・トレーニングとほぼ同じでした。大体想像がつくことが多いです。ただ、それを理論的に体系たててわかりやすく、しかも即実践して納得できる、というのが素晴らしいと思いました。

 ホテルでは調理できないので、急遽、我が家でやったウェルカム・パーティーの時に、「(はなを)連れてくれば。」と、ボニー先生がおっしゃったのですが、残念ながら車が出せなくてはなを同伴できませんでした。それで、家に帰って「字を読む練習」をしてみました。[DOWN][SIT]もできます。ただ、ちょっと怪しいのは、字を読んでいるというより、SITして、「YES!」と言わなかったら、DOWNかな?と判断していると思うのです。もちろん短時間なので、毎日練習したら、もしかすると本当に字を見てできるのかもしれません。

 意外だったのは、「言葉が先で行動が後」という点とチェーンカラーがお薦めという二点です。\(◎o◎)/!
聴導犬の場合は、パピーでもあまり言葉を使用しないで手で合図するので、この点は全く違いました。チェーンカラーもちょっと。。。?なぜなら、日本の場合トレーニングや散歩でよく見かける「チョークを入れる」という事があります。ボニー先生の講義の中では、この事を絶対してはいけない、ということでした。それなら、チェーンカラーを使用しなくてもいいのではないか?と思ったのです。犬が勝手に自分から引っ張るなどの行為をしたとしても、チェーンだとすぐ力が抜ける、外せるから良い、と言いたい意味はわかるのですが、そうならないように名前を呼んで気づかせるとか、音をたてたり、ターッゲティングしたりとかいろいろな方法があるのなら「チェーンカラーをお薦め」ということは、どうなのかなぁと、思いました。(プレミア・カラーも、良いそうです)
犬が、絶対に引っ張らないということはないのですが。。。使用するのには、抵抗あります。

 柴内先生のレクチャーの[上顎犬歯上の歯肉を押して、心臓が正常に動いているかどうか。]というお話で、早速家でも試してみました。普段の歯肉の色を覚えておけば、なにかあったときにすぐ対応できるので、毎日目耳口などのチェックと一緒に習慣付けようと思いました。

 とにかく母親(飼い主)は、明るく楽しく前向きな「ど〜んと肝っ玉かあさん」タイプがいい、ということですかね。(^^)

※セミナーとレクチャーに関しては、聞き間違え、書き間違えの可能性があるかもしれません。
そのようなことがありましたら、お詫びいたします。<(_ _)>by はなべ〜 03.7/9



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